衣料スーパー「タカハシ」、アプリ刷新1ヶ月で会員10万人突破。開封からの利用率70%のクーポン基盤をiSINで構築

過去ベンダー案件で不安視されていた移行を成功させ、顧客理解型小売への転換基盤へ

店舗拡大とともに「顧客理解の限界」を感じていた、関東圏約50店舗展開のオフプライス衣料品スーパー「タカハシ」。 過去のアプリ刷新では別ベンダーで会員移行に大きな課題を抱えていたなか、2026年5月1日に新会員アプリをリリース。 約1ヶ月後の5月30日時点で会員数は10万人を突破し、クーポン開封→利用率は70%を記録した。 当初3〜4ヶ月で会員8万人を目指していたタカハシ社が、なぜ短期間でこの成果を実現できたのか。 CRM・POS連携を含む「経営基盤」としてのアプリ構築の全プロセスを、本記事で紹介する。

導入概要
導入企業株式会社タカハシ
業界・業態オフプライス衣料品スーパー(訳あり品・在庫処分品を低価格販売)
展開規模関東圏 約50店舗(将来 200→800店舗を見据える)
導入機能会員証(バーコード方式)、クーポン配信、ポイント、CRM連携、POS連携、セグメント配信
リリース日2026年5月1日
主な成果リリース約1ヶ月で会員10万人超、クーポン開封→利用率70%、退会者ゼロ
導入目的顧客理解型小売への転換、200→800店舗展開を見据えた経営基盤構築

1 課題 ― 「顧客情報を持たない経営」と、店舗拡大に伴う限界

オフプライス業態の強みと、その先の壁

タカハシ社は、関東圏で約50店舗を展開するオフプライス衣料品スーパー「タカハシ」を運営している。 訳あり品や在庫処分品を低価格で販売する形態で、地域顧客から「掘り出し物が安く買える店」として長年支持されてきた。

しかし店舗拡大が進むにつれ、オフプライス商材のみに依存する経営モデルの限界が見え始めていた。 PB(プライベートブランド)商品やプロパー寄りの商品も含めて取り扱う商品の幅が広がる中、 「タカハシとは何か」「どの顧客が、どの商品を、どの頻度で買っているのか」を把握する必要性が高まっていた。

Q. 店舗拡大に伴い、なぜ顧客理解が重要になったのですか?

A. オフプライス商材は「偶然の出会い」が価値の源泉でした。ですが、PB商品やプロパー商品も扱うようになると、特定の顧客に特定の商品をきちんと届けるマーケティングが必要になります。100店舗、200店舗と広がる中で、すべての店舗で同じやり方は通用しません。地域ごと・顧客ごとに最適な届け方を考えるためには、顧客を理解するためのデータ基盤が不可欠だったんです。

旧アプリが抱えていた2つの課題

新アプリ導入の検討は、旧アプリが抱えていた以下の2つの課題から始まった。

課題1 ― 全顧客一律の「一方通行配信」

旧アプリには、全ユーザーに同じ情報を一方的に配信する仕組みしかなく、顧客ごとの購買傾向や来店頻度に合わせたアプローチができなかった。「顧客理解型小売」への転換を目指すタカハシ社にとって、これは構造的な制約だった。

課題2 ― 会員数増加に伴うランニングコストの肥大化

会員数が増えるほどランニングコストが大きくなる料金体系で、費用対効果の見直しが必要になっていた。事業成長と運用コストが反比例する構造は、店舗拡大フェーズには明らかに不向きだった。

過去の苦い経験 ― 別ベンダーでの移行失敗

もう一つ、タカハシ社が抱えていた大きな不安要素があった。 過去にも別ベンダーでアプリ刷新を経験した際、会員移行で大きな課題が発生していた。 新アプリ刷新の検討にあたっては、社内で「同じことが繰り返されるのではないか」という慎重論も強かった。

Q. 今回の刷新にあたって、最も不安だった点は何でしたか?

A. 正直、会員移行が一番の不安でした。過去の刷新時に大きな課題があったので、社内では「今回も移行で躓くのではないか」という慎重な意見が多かったんです。新ベンダー選定にあたっては、コスト以上に「本当に実現できるのか」という実現可能性を最重視することになりました。

「顧客情報を持たない運用」からの脱却

加えて、タカハシ社では以前、顧客情報を取得・運用する専門部署がなく、個人情報管理やセキュリティ面のリスクから 「あえて顧客情報を持たない運用」を選んできた歴史があった。 その後、営業企画機能が社内で整備され、「誰に、何を、どう届けるか」を考える段階に進んだ。 CRM連携の必要性が、ここで初めて経営課題として浮上した。

2 解決策 ― 海外ベンダー・大手系を比較した上でのiSIN選定

求めていたのは「アプリ制作会社」ではなく「実現パートナー」

タカハシ社が新ベンダーに求めていたのは、単なるアプリ制作会社ではなかった。 CRM連携・POS連携を含む包括的なシステムを、現実的な費用感で実現できる「実現パートナー」だった。 複数の選択肢を比較検討した結果は、以下のようなものだった。

評価軸海外系ベンダー大手系の改修案iSIN(iTAN)
CRM/POS連携対応可対応可だがコスト過大対応可、費用感も妥当
国内サポート継続性に不安
費用感CRM含めると過大現実的
柔軟性
提案姿勢「難しい」「その方法では無理」「やれる方法はあるはず」

選定の決め手 ― 「やれる方法はあるはず」

他社では「その費用では難しい」「その方法では無理」と言われることが多かった中、 iTAN側は「やれる方法はあるはず」と前向きに受け止めた。これが選定の大きなきっかけとなった。

Q. iSINを選んだ決め手は何でしたか?

A. 他のベンダーには「その費用では難しい」「その方法では無理」と最初から線を引かれることが多かったのですが、iTANさんは「やれる方法はあるはず」と前向きに受け止めてくれました。最終的には、実現したいこと・費用感・国内サポート・柔軟性、この4つのバランスがiSINに優位性があったということに尽きます。

3 導入プロセス ― 「移行成功」への設計

今回のアプリ刷新でタカハシ社が最も重視したのは、既存会員の移行を確実に成功させることだった。 導入プロセスは、この一点を軸に設計された。

フェーズ別の進め方

フェーズ期間内容
1. 要件定義[要確認]CRM/POS連携の要件整理、移行対象会員の精査、機能設計
2. 構築・連携[要確認]iSIN基盤上でのアプリ構築、POS連携(バーコード方式)、CRM連携
3. 移行設計[要確認]既存会員データの移行ロジック設計、テスト、UAT
4. リリース2026年5月1日新アプリリリース、既存会員への移行案内開始
5. 運用・改善継続中クーポン配信、CRM分析、店舗オペレーション最適化

店舗オペレーション設計 ― QR方式からバーコード方式へ

導入プロセスの中で、店舗オペレーション設計も重要なテーマだった。 旧アプリでは、ポイント付与時に顧客自身がQRコードを読み込む方式を採用していたが、 新アプリでは従業員がバーコードを読み込む方式へ変更した。 この変更により、ポイント付与の管理が明確になり、従業員側の負担やオペレーションの曖昧さが軽減された。

Q. オペレーション変更で、店舗の反応はいかがでしたか?

A. 実は店舗からの反応が、数字より嬉しかったかもしれません。以前のQR読み込み方式だと、お客様がスマホをうまく操作できないときに「どうしたらいいの?」と従業員が対応する必要があって、レジ周りで滞留が起きることがありました。バーコード方式になってから、その手間がなくなり、レジ業務がスムーズになった、という現場の声を多くもらいました。

4 成果 ― 数値で見る、リリース約1ヶ月の実績

2026年5月1日にリリースした新アプリは、タカハシ社の予想を大きく超える成果を生み出している。

10万人超会員数(リリース約1ヶ月・5/30時点)
70%クーポン開封→利用率(業界平均5〜15%)
0件退会者数(52日経過時点)
指標当初目標実績補足
会員数(リリース約1ヶ月時点)3-4ヶ月で8万人約1ヶ月で10万人超5月30日時点
クーポン開封→利用率(目標なし)70%業界平均5-15%、5倍以上の水準
3%OFFクーポン開封→利用率-85%特に強い反応を示したクーポン
継続アクティブ会員(53日経過時点)-9万人超6月22日時点、初動だけでなく継続性も確保
退会者数-0件リリースから52日経過時点

成果1 ― リリース約1ヶ月で会員10万人を突破

会員数は、当初3〜4ヶ月かけて8万人を目指していたところ、リリース後約1ヶ月の2026年5月30日時点で10万人を突破した。 既存アプリからの会員移行に加え、新規獲得も同時に進み、過去案件で不安視されていた移行課題を完全に克服した形だ。 リリースから52日が経過した6月22日時点でも、アクティブ会員数は9万人を超える水準を維持している。 初動の爆発だけでなく、継続的な利用が確保されている点も重要な成果である。

成果2 ― クーポン開封→利用率70% ― 業界平均の約5倍

クーポン施策の成果はさらに顕著だ。 リリース後に配布した8種類のクーポンは、対象会員約9.6万人に対して総開封回数93,342回、総利用回数65,515回を記録し、 開封→利用率は70%に達した。 小売業界の一般的なクーポン利用率は5〜15%程度とされており、その約5倍以上の水準である。 特に「3%OFFクーポン」では開封→利用率85%を記録するなど、複数のクーポン施策で高い効果が確認されている。

Q. クーポン利用率70%という数字を、どう受け止めていますか?

A. 正直、この数字には我々も驚いています。業界平均と比べてかなり高い水準で、施策の効果がはっきり数字に表れている。これはCRM・POS連携で「誰にどのクーポンが響くか」を分析できる基盤が整ったからこそ実現できた数字だと考えています。これから、さらに精度を上げていきたいです。

成果3 ― 店舗オペレーションの改善 ― 従業員側の負担軽減

数値以外の成果として、店舗オペレーション面での改善も大きい。 以前のQRコード読み込み方式から、従業員がバーコードを読み込む方式へ変更したことで、ポイント付与の管理が明確になった。 レジ周りでの顧客対応もスムーズになり、従業員側の負担が軽減されている。

5 苦労・改善点 ― 移行成功の裏側にあったもの

ここまで成果ばかりに焦点を当ててきたが、実際にはプロジェクトを通じていくつかの苦労や改善点もあった。当時の経緯を率直に紹介する。

要件定義の難しさ

CRM・POS連携を含むシステムは、単なるアプリ制作と比べて要件定義の複雑性が高い。 タカハシ社・iTAN・POSベンダーの3者間で、データ連携のルールやエラー時の挙動を1つひとつ詰めていく作業は、 想定以上に時間と労力を要した。

パッケージ制約と柔軟対応のバランス

iSINはパッケージ型のプラットフォームのため、すべてのカスタマイズに応じられるわけではない。 タカハシ社からの個別要望に対して、「どこまでパッケージ標準で対応し、どこからカスタマイズが必要か」の線引きを iTAN側と協議する場面は何度もあった。 結果として、現実的な範囲でカスタマイズを行いつつ、パッケージ標準でカバーできる部分は最大限活用する形で着地。 これにより、コストとスピードのバランスが取れた。

リリース後の継続的改善

リリースは「ゴール」ではなく「スタート」である。 リリース後にユーザー利用状況を見ながら、UI改善、クーポン施策の最適化、CRM分析の精度向上を継続的に実施している。

Q. リリース後の運用で、特に意識していることは?

A. 数字を見ながら、すぐに改善できる体制を維持することです。リリースしたら終わりではなく、毎週・毎月のサイクルで「どのクーポンが反応良かったか」「どの顧客層が活発か」を見て、次の施策を打つ。このサイクルが回せる基盤を作ったことが、今回の最大の成果かもしれません。

6 今後の展望 ― 50→200→800店舗展開を見据えたワントゥワンマーケティングへ

タカハシ社は、今回のアプリを表面的なUI刷新ではなく、裏側で会員ID・購買・来店・クーポン利用などを分析できる 「経営基盤」として位置づけている。

3つのゴール

ゴール1 ― 来店頻度の向上

会員データの分析により、来店頻度の低い顧客への適切なアプローチを設計。顧客一人ひとりの来店ペースに合わせた施策を展開する。

ゴール2 ― 客数増加

新規会員獲得と並行して、既存会員の再来店促進を進める。特に「離反予兆」の早期検知と、再来店動機の創出を重視する。

ゴール3 ― 地域商圏でのシェア拡大

郵便番号データを活用した4〜5km商圏内での顧客シェア分析を実施。店舗別の商圏特性に応じた施策を打つ。

最終目標 ― ワントゥワンマーケティングへ

最終的に目指すのは、顧客一人ひとりに寄り添うワントゥワンマーケティングだ。 「入園・入学」「キャンプ」「行楽」「スポーツを始めるタイミング」など、顧客のライフイベントに合わせた商品提案を行うことで、 「顧客が損をしない買い物」を実現する。これがタカハシ社の最終的なビジョンである。

Q. 最終的に目指すお客様像は?

A. 「あなたに必要な商品が、必要なタイミングで届く店」。それがタカハシでありたいと考えています。お客様が「何を買おうかな」と迷う時間をなくして、「これが欲しかった」を提供できる店。その実現のために、今回のアプリは経営基盤として大きな役割を果たしてくれると期待しています。

50店舗から200店舗、さらに800店舗展開を見据えるタカハシ社にとって、今回のアプリは小売DXを支える経営基盤として、長期的な事業成長の土台となる。

7 成功ポイント 5選 ― 同業他社への示唆

タカハシ社の事例から、店舗チェーンでのアプリ刷新を成功させるための示唆を5つにまとめる。

ポイント1 ― 「実現したい絵」を持ったうえでパートナーを探す

漠然と「アプリを刷新したい」ではなく、「CRM/POS連携で顧客理解型小売へ転換したい」という明確なビジョンを持ったうえでベンダー選定に臨んだことが、最初の分岐点だった。「やれる方法はあるはず」と前向きに受け止めるパートナーを見極められた背景に、この明確なビジョンがある。

ポイント2 ― コスト×柔軟性×サポートのバランス重視

単純な価格比較ではなく、CRM/POS連携の対応力、国内サポート継続性、柔軟性を含めた総合判断でiSINを選定。短期的な価格より長期的な事業価値を重視した判断が結果につながった。

ポイント3 ― 既存会員の移行設計を丁寧に行う

過去案件で移行に苦労した経験を踏まえ、移行設計に最大の注意を払った。10万人超の会員移行成功は、この設計の賜物である。「移行リスク」を最大の不安要素として認識し、対策に時間をかけたことが奏功した。

ポイント4 ― 店舗オペレーション視点を入れる

顧客側のUIだけでなく、従業員側のオペレーション(QR→バーコード方式)も同時に最適化。店舗の生産性向上が、結果として顧客満足にも繋がる構造を作った。

ポイント5 ― 「アプリ刷新」ではなく「経営基盤構築」と捉える

今回のプロジェクトを「販促ツールの更新」ではなく「200→800店舗展開を支える経営基盤の構築」と位置づけたことが、社内合意形成と長期的な成果につながった。短期的な販促効果以上に、データ分析基盤としての価値を重視する視点が重要である。

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執筆: 株式会社iTAN(設立2018年、東京都台東区、代表取締役 倉田峻良)
公開日: 2026年[要確認]月[要確認]日
最終更新: 2026年[要確認]月[要確認]日

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